歯根歯髄温存法
できる限り歯を抜かないための治療
歯髄とは、歯の最も内部にある歯の神経や血管の集まりのことで、歯の寿命に大きく関わっています。
歯髄は感覚機能があるため、むし歯菌に感染した際痛みを感じることで早い段階で気づくことができます。しかし歯髄がない状態だと細菌に感染したことに気づかず、深刻な状態までむし歯が進行してしまうことがあります。
この歯髄の有無で健康な歯を維持できるかがどうかが大きく変わるため、可能な限り残すに越したことはありません。
当院では、MTA(歯科用セメント)を使った歯髄保存法を行なっております。
歯髄保存法とは露出した歯髄をMTAで封鎖し、細菌の進入を防いで歯髄を保存する治療です。
MTAとはケイ酸カルシウムを主成分としており、乾燥すると中性になるため体に害がなく、生体親和性も高い安全な材質です。高い封鎖性と適合性、殺菌性が認められ、歯髄の保存治療の高い成功率が臨めます。
従来は水酸化カルシウムを主成分とする材質を使用していますが、MTAの方が良質な保護膜を形成することができ、MTA自体が歯と接着するため、細菌の侵入を食い止める働きもあります。
根っこの歯髄まで感染が進行すると、感染した歯髄を除去する根管治療を行っていく必要があります。
歯髄を除去すると栄養が行き届かなくなる上、治療の際歯を削ることで厚みが薄くなるため、枯れ木のように折れやすい状態になります。このように歯の根っこにヒビが入ったり割れてしまうことを歯根破折といいます。
歯根破折が起きてしまうと抜歯のリスクが極めて高くなります。
歯が割れる原因
歯根破折はむし歯や歯周病と違い予防が難しいとされています。
割れてしまう主な原因は下記の通りです。
●外側から強い力が加わる外傷
●噛み合わせ不良や歯軋りで力が加わる
●金属の土台が入っている
いずれも神経をとって脆くなっているとより破折しやすくなるため、いかに歯の根っこの歯髄を残せるかが鍵となります。そのため、歯の根っこの神経を取ってしまう根管治療をする前の段階で感染をしっかり食止めることができれば、歯根破折のリスクが抑えられると考えています。
根管治療を回避するための歯根歯髄温存法
従来の歯髄保存法は、歯冠歯髄の除去を最小限に抑える事に重点を置いた保存治療です。
歯冠歯髄に到達する手前まで虫歯の除去を行い、薬剤を置いた後神経の反応が良好であれば補綴物で封鎖します。
この方法だと確実に感染部位が取り切れたかを確かめる術がなく、感染部位が取り切れておらず薬剤が功を奏さなかった場合は何年後かに再発し、根っこの神経まで感染して結局根管治療になってしまう場合があります。
当院の推奨する歯根歯髄温存法では、歯冠部分の神経を全て取り除き代わりにMTAで完全に封鎖して根っこの神経(歯根歯髄)を温存させることで、根管治療への移行を回避し、歯根破折のリスクを最小限に抑えます。
また、温存させた歯根歯髄を守り歯の寿命を伸ばすために、MTAで封鎖した後は適合性が良い保険診療外のセラミックの被せ物で補います。
歯根歯髄温存法の流れ
01
麻酔をし、感染部位を取り除くとともに歯冠部の神経を除去。
洗浄殺菌し、MTAを貼付して歯科用セメントで仮封する
保険診療 + MTA ¥48,400(税込)
02
経過が良好であれば土台を形成し、被せ物の型取りを行う
保険診療
03
虫歯の再発防止のため適合性のよいセラミックの被せ物をセットする
セラミック被せ物 ¥77,000〜
注意点
●MTAはどんな症例にも適応できるわけではありません
何もしなくてもズキズキ痛む(自発痛がある)、温かいもので痛むなどの炎症歯髄や感染歯髄は非適応症となります。
●100%神経を残せると言うわけではありません
歯の状態によっては、歯髄保存治療後に歯髄の炎症等により抜髄処置が必要になる場合があります。
●治療直後は歯がしみる場合があります
治療の直後は、一時的に歯が過敏になり冷たいもの等でしみたり痛む場合があります。
●保険適応外となります